第三の歯と言われる人工歯根を使用した治療、口腔外科医だからこその骨造成、サイナスリフト、仮骨延長術など難症例の顎骨再建を含めたインプラント治療も行います。

インプラントとは?

支える歯を失い、入れ歯という選択肢しかなくなった方が第3の歯としてスウェーデンのイエテボリ大学で世界に初めてチタン製の人工歯根を入れて早50年経過致しました。

今日ではインプラント治療は世界の歯科治療においても一般的な治療法となりました。いままで入れ歯で苦労されてきた方がインプラントにより元の歯が在った時と同じように会話や食事を楽しみ、控えていた外食も楽しめるようになりました。

院長自身のインプラントの関わりは、卒後奈良県立医科大学歯科口腔外科学講座に入局し、口腔がんを始めとする腫瘍や外傷、唇顎口蓋裂の患者さんの術後、顎補綴における義歯に代わる役割としてQOL向上の為、インプラントを用いた再建に携わりインプラント治療の必要性を感じました。その後、大学の歯科口腔外科を顎顔面インプラント学会や、当時一般開業医主体の日本インプラント学会などにも参加し、当時まだ残っていた、骨膜下インプラントや人工サファイアを用いたインプラントの存在を知り、当時長期的予後のいいブローネマルクインプラントの優位性を知り携わって参りました。インプラント補綴の有用性今やインプラントは患者さんのQOLを高め感謝される歯科治療の一つと言えます。今回、そのようなインプラント治療というものについて、入れ歯やブリッジで不自由さを感じておられる沢山の方に納得して頂きたく説明させて頂きました。

歯を失った後の治療法

これらは歯を失った後、ご自身がどのような治療が合っているのかを簡単に纏めた表となります。

治療方法図解メリットデメリットおよその費用
インプラント
(人工歯根)
◎自分の歯に限りなく近い人工の歯

自分の歯と同じような感覚で噛める。食べ物の味や感触が良く分かります。

周りの歯を傷つけず、他の歯にかかる負担が減る→残存歯が長持ちする

あごの骨がヤセるのを防ぐ

手術が必要

喫煙、 強度の糖尿病などの疾患の場合、インプラントができないことがある

 

× 保険適用外(保険外の義歯やブリッジと同程度。本数、部位、骨の状態により費用が変わる)

 

 

入れ歯

(義歯)

〇比較的簡単に治療が受けられる。

 

×かみごこちが悪い場合がある。

×固い食べ物では苦労する場合もある

×違和感を感じることがある

×発音がうまく出来ない場合がある

×見た目も良くない場合があります。

×手入れが毎日必要

〇保険適用(ある程度設計の決まった形)

△保険適用外(快適さ、見た目のいい入れ歯)

 

ブリッジ〇自分の歯と同じようにかむことができるので、食べ物の味が良く分かる

〇費用をかければ、見た目の仕上がりが良くなる

 

×歯の抜けた周囲の健康な歯を削る必要がある

×歯の抜けた部分の骨が次第にヤセていく場合がある

×発音に問題のある場合がある

 

〇保険適用

△保険の適用外(見た目、機能)

 

 

インプラント治療とは?

初診時(カウンセリング・通常検査・CT検査・診断・治療方法の説明・治療費見積り書の発行)

その方に適したインプラント治療を受けて頂くために、カウンセリングにて、お悩みやご要望を伺います。
カウンセリングを行った後、インプラント治療に適しているかどうかを診断するため、模型(歯型)採得・口腔内写真・レントゲン写真の撮影・CT撮影などの諸検査の後、資料採得を行ないます。諸検査が終了した後、診断を行い(骨の量などの計測を行わなくてはならないため、診断には多少のお時間がかかります)、その後、その方に合った治療方法や治療期間についての説明を受けて頂きます。治療についての説明が終了した後、治療費用に関しても治療方法のお見積り書を発行し説明をさせて頂いております。
CT撮影は三次元的に骨のボリュームを計測出来るので撮影は必須となります。

※骨造成(インプラントを支える骨を増やす処置)を行わないといけないケース
(すべての方が対象という訳ではありません。)

CTなどから総合的に判断した骨量より、骨造成(インプラントを支える骨を増やす処置)を行わないとインプラント治療ができないこともあります。
インプラント治療を行うにはインプラントをサポートするに充分な骨の量が必要になるからです。
患者様の症状や顎の骨の状態にもよりますが、骨の量が少ない場合は、骨誘導再生法(GBR法) ・上顎洞底挙上術(ソケットリフト法)・上顎洞底挙上術(サイナスリフト法)・オンレーべニアグラフト術・骨延長術などの骨の量を増やす手術を先に行うことがあります。

※骨のボリュームがそれなりにあるケースでは、インプラント手術と同時にこれらの骨の量を増やす手術を行うことも多くありますが、シビアな吸収が見られる、又は審美性をより求められる方には一旦骨造成処置を行った後、約半年後骨が生着したのを確認した上でインプラント埋入をさせて頂く事もあります。

シビアなケースとは?

骨の量が不足している患者様に共通している状態
1.歯周病の進行を長期間にわたり放置している。
歯周病が進行すると、歯を支える骨など歯周組織が破壊されてしまいます。歯周病の進行を長期間にわたり放置していると、骨の量が大幅に少なくなってしまいます。
2.入れ歯を長期間にわたり使用している。
入れ歯はかむときの大きな力が歯肉や顎の骨に加わり、歯茎を痩せさせます。入れ歯を長期間にわたり使用していると、骨の量が大幅に少なくなってしまいます。
3.上顎の歯を長期間にわたり失ったままにしている。
上顎の歯を失った状態が長く続くと、上顎洞が骨を吸収して、拡大してしまいます。その結果、上顎の骨の量が、大幅に少なくなってしまいます。

インプラント埋入手術(一次手術)

インプラントを埋め込む手術には、1回法と2回法があります。
治療する部位やインプラントの種類や本数、また顎の状態により選択が異なってきます。インプラントのヘッド部分を露出させて埋め込む1回法は通院回数が少なくなるという利点があります。
インプラントが骨と結合した後にアバットメント(土台)を取り付けるための再手術を行う2回法はインプラントを完全に歯肉の内部に埋め込みますので、感染のリスクが少なくなるという利点と、歯肉の形態をより自然に作れるという利点があります。
どちらの手術もそれほど苦痛を伴いません。時間も肉体的疲労も一般的な抜歯治療と同程度とお考えください。

免荷期間(チタンが骨と結合するのを待つ期間)

抜糸・固定期間(免荷期間)
術後1週間程度で抜糸を行った後、骨とインプラントが結合するのを待ちます。結合するまでに要する期間は通常、上顎は4~6ヶ月、下顎は3~5ヶ月程度です。(インプラントの種類によっては上記期間を大幅に短縮することが可能な場合もあります。)

金具アバットメント連結手術(二次手術)

骨とインプラントの結合が確認した上でアバットメント(歯茎を治癒させる為の貫通金具、もしくは差し歯のような土台の取り付け処置)を連結する処置を行います。
必要に応じて仮歯の作製を致します。
仮歯を装着した後、実際にお食事などをして頂きながら様子を見て仮歯の形態やかみ合わせを調整する場合もあります。

※かみ合わせが比較的安定しているケースなどは仮歯の作製を省略し、最終補綴物である上部構造体(セラミック歯など)を作製する場合もあります。

最終補綴物(最後の被せもの)の印象(型取り)

歯茎の状態が安定した時点で、インプラントの上に被せる被せものなどの最終補綴物の作製を開始します。

最終補綴物のトライ、もしくは取り付け

型取りしたものを基に、仕上がったインプラントの最終の被せものをお口の中で合わせてフィット感や色調を確認した上で問題なければ取り付けを行います。

インプラントの骨造成

元々のご自身の骨の環境が良ければインプラントの手術は簡便であり、機能回復にも大きく寄与するものですが、

抜歯時期を見誤った重度の歯周病や外傷などによる極度に吸収した歯槽骨の状態では、人工歯根(インプラント)を入れるための十分な骨を作る必要があります。これは言うならば、家を建てる際、基礎をしっかりさせてから柱を立てる事と同じ様なものです。このステップを怠ると、インプラントが入っても日々のブラッシングに時間を割かなければいけなくなったり、インプラントによる歯槽膿漏(インプラント周囲炎)などの起こる原因になりかねません。

その為には、痩せてしまった欠損部の骨を生体材料などで増やす必要があります。

院長が在籍していた際、大学病院では癌により取り去った部分には足の脛の骨を血管毎移植したり(血管柄付き腓骨移植)、他大学では腰の骨(腸骨移植)などで欠損部の再建を行っておりましたが、入院を要したりする必要もあり腸骨のような軟かい海綿骨では吸収が大きくなります。一方、インプラントを行う場合オトガイ部(下あご)より骨を採取したり、下顎枝(親知らずの後ろや外側)

よりご自身の骨をドナーサイトに填入する術式がメジャーではありましたが、今日では生体材料もより多種に渡り機能もより十分なものが出てきましたので、大きな骨欠損以外ではそういった生体材料を使用する事が多くなってきております。

骨補てん剤には、

骨形成能 (osteogenesis)  移植骨中の細胞自体が増殖し、直接骨を形成する能力。

骨誘導能 (osteoinduction) 未分化間葉系細胞が骨芽細胞に分化し骨形成を誘導する能力。

骨伝導能 (osteoconduction)  細胞が骨を形成するための足場としての能力。

こういった能力のある骨補填剤が必要であり、これらが全て兼ね備わっているものは自家骨移植(AUTOGRAFT)のみとなります。

アメリカでは他家骨移植(ALLOGRAFT)も選択肢の一つであり、所謂他人の骨となります。脱灰されたのち、フリーズドライする事により、免疫反応を起こさせないもので、インプラントメーカー自体も販売しており、当院でもケースによっては使用する場合もあります。ただ、日本国内では厚労省認可を受ける可能性がない為、個人輸入という形で使用することがあります。

他にはBIO-OSSやボーンジェクトのような牛の骨を使用する異種骨移植(XENOGRAFT)があります。

他にもオスフェリオンなどのβ-TCPや炭酸アパタイト製剤、セラミクス骨補填剤などのネオボーン、アパセラムなどのハイドロキシアパタイト骨補填剤などこれらを人工骨移植剤(ALLOPLAST GRAFT)があります。

最も良いのはご自身の骨を使用する自家骨移植となりますが、手術侵襲が大きくなるなどのデメリットもありますので、上記のような骨補填剤を使用することで、骨欠損の回復を図ります。

また、垂直的な骨を作るのは、水平的な骨を作るのと比較すると難易度が高くなります。

吸収してご自身の骨に置き換わらないといけないですが、早期に吸収してしまう骨補填剤では、目標とするボリュームが得られずインプラント埋入の断念、再手術もしくはショートインプラントにしないといけなくなる場合があります。