歯を失うに従い、喪失した部分には周りに歯があればその歯の力を利用するブリッジ(保険治療か保険外治療)、又は喪失した部分の骨の状態により人工歯根であるインプラント(保険外治療)。ブリッジが構造的に無理な方はここでの入れ歯治療(保険治療か保険外治療)といった選択肢があります。

保険の素材のメリット・デメリット

“保険診療”の入れ歯
メリット

 

  • 保険が適用されるので、費用が低価格ですむ
  • 完成までの工程が少ないので、通院期間が短くてすむ
  • プラスチックなので修理しやすい
デメリット
  • プラスチック製に限られるので、装着時に違和感や不快感を覚えることがある
  • 熱伝導率に劣るので、食事のおいしさを感じにくい
  • 強度や耐久性に劣るので、毎日使うことですり減りや変色が見られるようになり、破損する場合がある

 

自費の素材のメリット・デメリット

“自費診療”の入れ歯
メリット
  • 薄く作製できる金属製のもの、クラスプ(歯にかけるばね)のないシリコン製のものなど、違和感や不快感のない自分に合った入れ歯に仕上がる
  • プラスチックに比べ熱伝導率に優れ、よりおいしく食べられる
  • 自分の歯のように自然な見た目に仕上がる
  • 強度があり耐久性に優れているので、変形や破損、変色しにくい
デメリット
  • 保険が適用されないので、費用が高額になる
  • 細部にこだわって丁寧につくるので、完成までの工程が多く、通院期間が長くなる
  • 修理が難しい場合がある

部分入れ歯の色々

保険診療での入れ歯

保険診療の範囲内でお作りする入れ歯です。

メリット
〇価格が安く短期間で仕上がる

デメリット
●使用できる材料や方法に制限がある。
●そのため、見た目の審美性や装着時の安定性に欠ける場合がある。

保険外診療で製作した入れ歯(金属床製部分床義歯)

床(しょう)といわれる入れ歯の土台の部分に金属を使用した入れ歯です。

メリット
〇強度があるので破損しにくい
〇装着時の違和感が少ない
〇飲食物の温度が伝わりやすく、美味しく食事をお召し上がりになれる

デメリット
●金属を使っているため、アレルギーがある場合は適応できない
●歯にかける金属が見える場合がある
●修理が困難

保険外診療で製作した入れ歯(ノンクラスプデンチャー)

金属の留め具(クラスプ)を使わない部分入れ歯です。柔らかく軽い素材です。ノンクラスプデンチャーにはいくつかの種類があり、当院では、患者さまのご希望やお口の状態に合わせてご提案しています。

メリット

〇金具が外から見えないため、自然な印象になる
〇残っている歯にかかる負担も少ない
〇装着時の違和感が少ない
デメリット

●耐久性が高くないので、修理できないケースがある
●残っている歯の状態によっては適応できない場合もある

保険外診療で製作した入れ歯(アタッチメントデンチャー、コーヌスクローネ)

残っている歯に金属の土台を被せ、入れ歯に取り付けた冠をはめ込んで装着する入れ歯です。

メリット
〇バネを使わないので、見た目(審美性)が良い
〇耐久力に優れていて長持ちする
〇装着時の違和感が少なく噛み心地がよい

デメリット
●土台となる歯を削る必要がある
●残っている歯の状態によっては適応できない場合もある。又は土台の歯が喪失すれば義歯の利点が失われる場合がある

総入れ歯(総義歯)の色々

保険診療の総義歯

保険診療の範囲内でお作りする入れ歯です。

メリット

〇価格が安く短期間で仕上がる
デメリット

●使用できる材料や方法に制限がある。そのため、見た目の審美性や装着時の安定性に欠ける場合がある。

保険外診療の入れ歯(金属床義歯)

床(しょう)といわれる入れ歯の土台の部分に金属を使用した入れ歯です。

メリット

〇強度があるので破損しにくい
〇装着時の違和感が少ない
〇飲食物の温度が伝わりやすく、美味しく食事をお召し上がりになれる
デメリット

●金属を使っているため、アレルギーがある場合は適応できない
金属アレルギーがあればパッチテストを行い、アレルギーを起こさない金属(チタン床、白金加金床を選択)
コバルトクロム床 金属床の中で最も治療費を抑えられる
チタン床     コバルトクロム床の4分の1の軽さでありながら強度があるコバルトより高い
白金加金床    精密な加工がしやすいため、粘膜にぴったり合いやすい入れ歯を作製できる 馴染みがよく、装着感が優れているが、金属床の中で最も重さがあり、費用負担が最も大きい

保険外診療(磁性アタッチメント、マグネット総義歯)の総入れ歯

メリット
〇磁力の力で入れ歯を維持するため、入れ歯がはずれたりする可能性が低くなる
〇通常の部分入れ歯では金属金具を使用するがその必要性がない(金属が見えないので見た目が良い)
〇入れ歯の下に歯が残るため、入れ歯が沈下しづらく力を入れてかめる。
〇残った歯に側方圧(横方向の力)がかかりづらいので、歯の負担軽減になる
〇状況により入れ歯の大きさを小さくすることができる
〇構造が簡単で取り外しも自由にできるのでお手入れも簡単

デメリット
●歯がないとできない ない場合はインプラント(人工歯根)で支えを作る
●MRI検査時(特に頭部)にはアーチファクト(磁石付近の画像に影響が出てしまう)が発生するので、場合によっては検査前に外さないといけない場合がある

自費の入れ歯の初診 ─作製開始から完成・装着までの流れ

自費の入れ歯は、一般的に以下のような流れで作製します。症例によって異なりますが、初診から完成・調整まで3ヵ月ほどかかります。その後も定期検診を受け、3~6ヵ月に1回は口と入れ歯の状態を確認する必要があります。

自費の入れ歯の治療の流れ(工程と時間)

1. 初診・カウンセリング

現在お使いの入れ歯についての不満などをお聞きし、口の状態を検査します。

2. 治療計画の立案

口の特徴や残りの歯の状況を踏まえ、どのような入れ歯が適切なのかをご説明し、治療計画をお伝えします。
治療費用の見積もりもご提示します。

3. 歯と歯肉の型取り

既製のトレーを使って歯と歯肉の型を取ります。

4. 患者さまに合ったトレーの作製

1回目に取った型を使って、患者さまの口に合ったトレーをつくります。

5. 精密な型取り

患者さまの口に合ったトレーに顎、歯肉、舌、粘膜などの動きを表し、この型に石膏を流して正式な模型をつくります。
この模型を使って入れ歯をつくっていきます。

6. 噛み合わせの確認(1回目)

模型から作った土台を使って噛み合わせを採取します。噛み合わせが不安定な患者さまの場合、何度か確認をすることがあります。

7. 噛み合わせの確認(2回目)

上下しっかり噛み合う歯がある場合、噛み合わせは一定の位置に収まりやすくなりますが、上下の歯の噛み合わせがない場合や上下に歯が少ない方の噛み合わせは、一定の位置に収まらないことが多くなります。そのため、噛み合わせの確認は慎重に行なう必要があります。

8. 歯並びの仮合わせ(1~2回)

噛み合わせをもとに、入れ歯の装着具合、噛み合わせ、歯並びを考慮しながら人工の歯を並べます。この段階では蝋の上に歯を並べるので、好きな歯並びへと修正できます。歯並びも、噛み合わせと同じく何度か確認をすることがあります。

9. 完成

入れ歯が完成するので、調整して患者さまの口に合わせていきます。
入れ歯の手入れ・保存方法、日頃の口腔ケアについてご説明します。

10. 調整

新しい入れ歯は歯肉になじんでいないので、使いながら問題点を確認して噛み合わせや痛い部分を微調整し、しっかり噛めるようにします。

11. 定期検診

入れ歯を長持ちさせ、快適に使い続けるために、定期検診を受けてきちんと調整することが大切です。特に下顎は時間の経過とともに変化していくので、噛み合わせや適合を確認して、すき間などを調整する必要があります。入れ歯の調子が良いときでも3~6ヵ月に1回は受診しましょう。

最後に、、、

入れ歯は完璧ではない

山本式総義歯咀嚼能率判定表

山本先生が50年程前に考案された入れ歯によって噛めるものの能率表となります。これは残存する歯の数にもよりますが、通常4辺りが入れ歯にとって負担のかからない範囲となります。よく、入れ歯でリンゴを丸かじりしたり、ピーナッツやミカンの皮も剥く方もおられますが、歯茎の支える骨(歯槽骨)が残っていれば可能ではあります。しかし、義歯による骨の吸収がその分進みやすくなりますので、よくご高齢の方から耳にする”若い時は入れ歯で何でも噛めたけど、今は痛みがでる”、”長く使って合わなくなって作り替えたのに硬いものが噛めない” などの声は労わって使っていない事による骨の吸収が原因と考えられます。現状、入れ歯とご自身の歯の咀嚼効率はご自身の歯を100とすると総入れ歯の方は精々20%程度だといわれています。逆にそれ以上噛んでいる方はそれを支える歯槽骨に過度な負担をかけているとも言えるのではないでしょうか?

デメリットをカバーできるインプラント治療

ここまでご説明してきた様に、自費の入れ歯は機能面でも審美面でも優れており、保険の入れ歯に比べて快適な使い心地を得られます。ですが、自費の入れ歯は決して完璧なものではありません。総入れ歯と部分入れ歯によって大きさは異なりますが、人工的なものが口の中にあるという存在感は、多かれ少なかれストレスになるものです。また、いくら「しっかり噛めて見た目が良い」とはいえ、入れ歯は歯ぐきの上に乗せて使うため、ご自身の歯と同じような使い心地を実現できるとまでは言いきれません。

このような入れ歯のデメリットをカバーできるのが第三の歯と言われる「インプラント治療」です。インプラント治療は、歯を喪失した部分の顎の骨にインプラントという人工歯根を埋め込み、その上に歯を取りつけてご自身の歯の代わりとする治療です。歯肉は人工のものではなく自分の歯肉となります。インプラントはチタンという金属でできており、顎の骨に埋め込むことで骨にしっかりと固定されます。入れ歯に起こりうる”ずれ”や”ぐらつき”などがなく、外れる心配はありません。そのため、自分の歯と同じように力を入れて噛むことができます。入れ歯は、自分の歯肉の上に人工の歯肉と歯が一体となったものを乗せることで失った歯を補うものですが、その点がインプラント治療と入れ歯の決定的な違いとなります。

ただし、インプラント治療は自費となるので、高額になります。外科手術を必要とし、治療期間が長くなるので、患者さまの負担も大きくなります。また、治療が完了した後は、インプラント周囲炎(※1)を防ぐためにご自身の歯のとき以上に口腔ケアを徹底し、歯科医院で継続的にメンテナンスを受ける必要があります。
※1 インプラント治療は人工歯を取りつけるので、虫歯にはなりません。しかし口腔ケアを怠ると、歯肉の腫れ、歯肉からの出血、口臭など歯周病と同じような症状が現れ、埋め込んだインプラントが抜け落ちてしまうことがあります。

このように、インプラント治療は良い点ばかりではありませんが、それでも自費の入れ歯に比べ機能性・審美性ともに優れた治療です(※2)。自費の入れ歯をお使いの方でも、「インプラント治療に興味がある」「入れ歯をやめてインプラントにしたい」などとお考えの方は、ぜひ当院までご相談ください。
※2 患者さまの症状などによってはインプラント治療よりも入れ歯のほうが合う場合もあるので、治療方法は歯科医師とよく相談したうえで決定します。