一般開業医では困難な親知らずの抜歯は勿論、嚢胞(袋状になった病変)や腫瘍、外傷骨折などに対応しております

口腔外科の疾患

 

嚢胞(のうほう)

嚢胞(のうほう)とは中に液体や、おから状の物質(コレステリン結晶)が入っている袋状の病巣の事です。嚢胞は腫瘍ではありませんが、中に入っている液体やおから状物質の量が増えることによりその大きさが増大します。その結果、腫瘤ができたり骨の中に発生した場合は骨が吸収されたりします。一般歯科でよく見られるのは歯根嚢胞と言われる根の先端に出来る嚢胞となり、のぐち歯科クリニックでは根の治療では改善の見込みの少ない歯根嚢胞をバイオフィルム感染を起こした根の切除と共に嚢胞も摘出することがあります。

頭頸部領域にも多種多様な嚢胞が発生します。嚢胞の治療は摘出か開窓になります。

大きさにもよりますが、病巣の大きさによっては提携病院にて嚢胞摘出の手術を行なって頂きます。

含歯性嚢胞(術前)、顎下腺内唾石

含歯性嚢胞摘出一年後(術後)、顎下腺内唾石

含歯性嚢胞

歯の原基(歯が発生する組織)の上皮から生じる嚢胞で、その嚢胞腔内に埋伏歯の歯冠を含んでいます。

感染を生じて当院来院された患者さんです。 嚢胞が大きいため開窓にて経過を見るも縮小せず、当院外来にての手術を

希望されたため、行いました。その際、術前に下歯槽神経をまたぐ病変の為、術後下口唇の麻痺が生じる可能性を説明した上で行いました。

注意深く嚢胞壁を剥離し親知らずも同時に抜歯致しました。病変が大きいため、右下顎に外力が加わると骨折のリスクもあると説明し、経過を見ました。嚢胞壁は一塊で除去でき、術後の下口唇の知覚異常、麻痺は認められず、術後1年後のパントモ写真でも綺麗に治っています。

ただ、下顎の顎下腺の中に唾石があり、炎症がおきれば顎下腺の摘出が必要になるため経過を見せてもらっています。

 

粘液嚢胞

口の中の粘膜には小唾液腺という、唾液(粘液)を作り、粘膜を保護する器官があります。これら唾液腺
のパイプがふさがってしまい、唾液がうまく出ていかず、隙間に漏れだした粘液が貯まってくると、粘膜が
盛り上がりできては潰れを繰り返す場合があります。

手術時間はおおよそ 30 分程度で終わります。
まず、のう胞周囲に部分麻酔をします。のう胞上の粘膜を切開し、粘膜と粘液を包んでいる
組織と腫脹の原因となっている小唾液腺を取ります。このとき、周囲の小唾液腺も一部取るこ
ともあります。すべて取り終ったら、縫合し終了となります。人によっては縫合によって引きつれる感じが
したり、2-3 日腫れたりします。また、できている場所(下くちびるの神経の走行に近い場所)によって
は、とった場所の周囲に麻酔が残ったような感じが翌日以降も続く場合があります。
傷跡は口の中なので他人に見えるものではありませんが、大きさによっては処置後へこんだりする場合も
あります。また、手術直後はやや固くなることもありますが、時間の経過とともに気にならなくなります。
食事は傷が治るまで(抜糸まで)柔らかいもの、刺激のないものを食べるなど、注意が必要です。歯ブラシ
も患部を避けるようにします。

mucocele(lower lip region)

 

ガマ腫

粘液嚢胞と同じく唾液腺のパイプが口底部に出来てしまうもので、大きくなるとガマがえるのように膨らんでしまうことからガマ腫と言われるようになりました。

処置は開窓(だ液が詰まるところを開いた状態にしておく)処置をしますが、再発しやすい為、再発する可能性があるならば、のぐち歯科クリニックではピシバニールという抗がん剤を使用して人工的に炎症を起こさせる事で組織の硬化をさせてガマ腫を治癒させる方法をお勧めします(保険外診療となります)。

唾液腺の摘出を避ける為にもお勧めの術式となります。

口底部にガマ腫が認められる 開窓行うも再発しやすい

 

唾石

よく耳にされた事もある胆石や尿管結石と同様に唾液腺の中や導管の中に石(唾石)ができることによって生じる病気です。顎下腺に出来る事が多いです。

唾石の原因は導管の炎症や唾液の停滞、さらに唾液の性状の変化などです。

ものを食べようとしたり、あるいは食べている最中に、唾液腺のある顎の下(顎下部)が腫れて(唾腫 だしゅ)激しい痛み(唾仙痛 だせんつう)がおこり、しばらくすると徐々に症状が消退するのが特徴です。

のぐち歯科クリニックでは導管内などに見られる唾石(腺管内唾石)などを摘出させて頂くこともあります。

顎下腺の中にできたもの(腺体内唾石)は、顎下腺の摘出となりますので、提携病院にての全麻手術になります。

  

外傷

頭頸部領域のけが、骨折では、咀嚼(食べ物をかみくだくこと)、開閉口などの機能が障害されます。歯だけ折れた場合は、牛乳や保存液、なければ口の中に入れて受診してもらい、治療し機能回復も可能です。

深い裂傷や骨折の治療となると、全身麻酔下の手術や入院が必要となってきます。

のぐち歯科クリニックでは口腔外科医として、形成や整形といった医科的な知識と咬合という歯科的な知識をもとに、頭頸部領域のけが、骨折の診断、治療を行います。また、くちびるや口の中の傷の場合も、まず受診してもらい、診断と適切な処置やアドバイスを受けることをお勧めします。

扁平苔癬

皮膚や粘膜にできる角化性で炎症をともなう難治性の病変です。口腔では頬粘膜によくみられますが、舌や口唇にも生じます。周りが赤く粘膜が固くなり白いレース様になっています。場合によっては、口内炎もできやすく、食事の際触れると傷んだり触ると接触痛が生じる場合もあります。まれにがん化することもあります(約1%)。

アレルギー、とくに歯科用金属によるものや遺伝的素因、自己免疫疾患、ストレスなどの精神的因子、さらに代謝障害などの関与が考えられていますが、正確な原因は不明です。

治療法は、うがい薬や副腎皮質ステロイド軟膏を使います。歯科用金属によるアレルギーが疑われる場合は、原因と思われる充填物(つめもの)や冠(かぶせもの)を除去する必要があります。これらを除去する前に、歯科用の金属アレルギー検査を行います。

白板症、紅板症(前癌病変と言われるものです)

口腔粘膜、とくに頬粘膜(きょうねんまく)や舌、ときには歯肉にみられる白い病変で、こすってもとれないものをいいます。白板症は比較的頻度も高く、とくに舌にできたものは悪性化する可能性が高いため、前がん病変の代表的なものとされています。癌化するのは約5-10パーセントと言われています。びらん(粘膜の浅い欠損)をともなうこともあり、ものが当たると痛かったり(接触痛)、食べ物がしみたりします。

原因としては喫煙やアルコールによる刺激(摂取しない方の約4倍癌化しやすい)、義歯やかぶせもの、詰め物やご自身の歯による慢性の機械的刺激、ビタミンAやBの不足、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、さらに加齢や体質なども関係するといわれています。

癌化するまえに、ご自宅でまずは確認して頂いてご自身にリンパの腫脹、刺激が加わる義歯や欠けた歯、割れてしまった詰め物かぶせものや、舌に当たってしまう邪魔な歯がないか確認して下さい。

簡単なセルフチェック表をあげておきますのでご自宅で確認して下さい

1、入れ歯があれば外して明るい光の下で、鏡を使って確認して下さい

唇の内側と下あごの歯ぐきを見て、触って下さい。
頭を後ろに傾けて、上あごの歯ぐきとその間を見て、触って下さい。
頬の内側の粘膜を見て、触ってみて下さい。
舌を前に出して、舌の両脇と舌の裏側、舌と歯ぐきの間を良く見て、触って下さい。
下あごの内下側から首にかけて触って見て下さい。

2、良く観察し、チェックしましょう!

白い斑点や赤い斑点はありませんか?
治りにくい口内炎や、出血しやすい傷はありませんか。
盛り上がったできものや固くなった所はありませんか?
下顎の内下側と首の脇に腫れはありませんか?顎下リンパ腺の腫れの確認をしましょう
食べたり飲みこんだりがスムーズにできますか?

頭頸部癌は、大腸癌や乳ガンと比較しても進行すると予後が未だに芳しくない傾向にあります。

進行する前に、異常に気付いたらまずは受診してください。

 

頭頸部新生物(舌癌、下顎歯肉癌、良性腫瘍等)

腫瘍、ガンといえば胃ガンや肺ガンを想像される方が多いと思います。胃や肺と同様に口の中やアゴ骨、唾液腺などの頭頸部にも腫瘍やガンは発生します。これらの部位の腫瘍やガンの鑑別診断を行います。

口腔内でよく見られるのは舌がんが一番多くみられます。

治療は、連携病院に紹介の上、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)を単独または組み合わせて行ないます。口腔内のガンは、しばしば難治性口内炎(治りにくい口内炎)として現れますので、単なる口内炎なのかそれともガンなのかを判断するには、組織の一部をとって顕微鏡で細胞を調べる必要があります。(病理組織学的診断)

上顎洞炎

鼻の周りには、鼻腔と連絡しているたくさんの空洞があります。これを、副鼻腔と呼び、上顎洞(鼻の両脇)・前頭洞(おでこの中)・篩骨洞・蝶形骨洞に分けられます。洞の奥の方は脳や眼に隣接しています。洞内は小さな毛(線毛)の生えた粘膜で被われ、この線毛の運動により、分泌物や異物が鼻腔へ排泄されます。

これらの副鼻腔に炎症があるものを、副鼻腔炎(上顎洞炎)と言います。副鼻腔炎と言うと分かりづらいのですが、蓄膿症(ちくのう症)と一般的には言われる事があります。
細菌やインフルエンザウイルスの繰り返した感染・アレルギー性鼻炎などが原因でなります。体質・生活環境も大きく影響します。何で蓄膿症と言うのかというと、炎症が慢性化すると、粘膜が厚くなって、鼻腔への連絡通路が塞がってしまい、洞内の分泌物や膿が副鼻腔の中で溜まってしまうからです。

一方、上の歯の根の病巣が原因で生じる事があります。(歯性上顎洞炎)原因歯の治療で改善する場合もありますが、根の先のバイオフィルムが原因の場合は根の治療では改善が見込めない為、抜歯をしないと改善しません。

投薬や原因歯の抜歯により改善傾向が認められる場合は軽度の治療と言えますが、改善が見込めない場合は連携病院にて歯科口腔外科では上顎洞根治術、耳鼻科では内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を入院下で行います。

顎関節脱臼

過度な開口により下顎の頭が動きすぎて外れてしまい、口が閉じられなくなることがあります(オープンロック)

のぐち歯科クリニックを受診してもらい、元の位置に整復(戻す)するお手伝いを致します。元に戻っても直後はすぐに外れやすいのでバートン包帯等で固定させてもらうこともあります。

尚、顎関節脱臼を起こした後、約6週間程度は大きな口を開ける事は避けて下さい。

何度も外れやすい方は、習慣性顎関節脱臼になります。その際は頬骨を変形させて低い関節隆起に角度をつけ外れにくくする等の手術が必要になりますので提携病院に紹介させて頂きます。

口腔カンジタ症(舌が黒くなる黒毛舌)

カンジダ菌とは、真菌(カビ菌)の一種です。カンジダ菌は、人間の体の中に常在している常在菌ですが、体の免疫力が低下したときにカンジダ症として症状が出てきます。(HIVや高齢者)
また、ステロイド薬や抗生剤を長期内服している患者において、常在菌のバランスが崩れることでもよく見られます。(菌交代現象)

お口の機能が衰えたり、だ液の分泌が少なくなったりする事で、舌の上(舌背)のヒダに汚れがこびり付いてしまい舌が黒くなってしまう黒毛舌と呼ばれる症状が露呈することがあります。

治療法としては、口腔内を清潔に保つよう、清掃するとともに、抗真菌薬(含嗽剤,口腔錠、軟膏、シロップ剤)を使用します。
薬を使用することで早期に目立たなくなりますが、真菌がなくなるまでは一定の期間服薬しないといけません。

三叉神経痛

中枢性の三叉神経痛(真性三叉神経痛)と、末梢に生じる三又神経痛(症候性三又神経痛)とがあります。

真性三叉神経痛は、頭の内で三又神経が組織や脳腫瘍に圧迫されておこる事が多いです。

一方、のぐち歯科クリニックでは、歯や副鼻腔の炎症性病変が原因となる三又神経痛を診察することがあります。

三叉神経は三つの枝(眼神経、上顎神経、下顎神経)に分かれ、どれが関与しているかによって痛みの部位は異なりますが、中枢性では摂食、洗顔、歯磨きなどの刺激で突然電撃痛がみられます。持続時間は短く、繰り返しておこります。一方、末梢性のものでは、痛みは電撃様ではなく、範囲や程度もさまざまです。

末梢性のものでは、原因を精査し原因疾患の治療を行います。真性では、軽症例に対しては、投薬にて経過を見たうえで処方量を減らしながら様子をみます。薬物療法が奏効しない場合には、神経ブロックも行います。症状によっては連携病院にて外科的に減圧手術にて改善をはかる事もあります。

最後に

のぐち歯科クリニックでは院長、副院長共に歯科口腔外科にて研鑽を積んでいましたので、顎顔面領域を医学的見地より診断することが可能です。

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